【前編】6年越しに黒歴史と向き合う
夏休みの宿題のようにずっと手をつけなければならないと分かっていながら、その現実と向き合うことができず、ずっと目を背けていた
むかし買ったサーフボードだ
かれこれ数年ほど放置状態で部屋のオブジェと化していた
当時めちゃくちゃ好きだったサーファーに気に入られたい一心で購入してしまったショートのサーフボード
ショートは板が短く軽いこともあり波の抵抗を受けやすい
そのためまともに乗れるようになるまで最低5年はかかると言われていた
全くサーフィンに興味がないくせに彼に本気アピールをしたかった私は「サーフィンやるならショートっしょ!」と迷いなくボードを購入してしまった
それが何やかんやで部屋のオブジェと化しているのだが、そこはもう察していただきたい…
友達からは「メルカリで売れば?」と言われたが、他人に譲るのははばかられた
というのも、この板は成就しなかった女の遺恨が宿っているので非常に縁起が悪く水難事故に遭う確率が高いことが予想された
ただ引っ越し前にどげんかせんといかん状態ではあり考えた結果、サーフショップに譲ることにした
この忌まわしい板はプロの手で管理してもらった方がよい
鵠沼海岸にあるサーフショップに電話して引き取ってもらえないか聞いてみた
「物を見てないと判断出来ないですね〜」ということだったので早速持って行くことにした
そのお店は6年前に初心者スクールに参加したサーフショップで、当時住んでいた浅草から鵠沼海岸まで片道約2時間ほどかけて通った思い出のお店である
引っ越し当日、荷物を業者に引き渡しボードを眺める
友達のMからもらった清め塩をふりかけ邪気を薄めボードを持って江ノ電でいざ鵠沼海岸!
遠くから駅員さんが慌てて駆け寄ってきた
「サーフボードはそのままでは載せられないよ」と乗車拒否された
ボードケースは千葉の知り合いの家に置きっぱなしになっていることを思い出した
あちゃーと思い、駅のホームから降りた
問題を先送りにするから引っ越し当日にこういうことになるんだと反省したが、というかそもそも何だこの板は、…とボードに対する怒りが勝った
少し考えてタクシーを呼んだ
数分後にきたタクシーのおじちゃんがボードを見て分かりやすく嫌な顔をしていたが気づかないふりをした
後部座席の窓から前方に突っ込んで載せてもらい、タクシーは鵠沼海岸へ
134号線を走る車の窓から海が輝いて見えて余計に惨めな気持ちになった
数分後サーフショップに到着した
「こんにちはー」と店に入ると奥から良い感じにチャラいお兄さんが登場した
6年前のサーフィンスクールの先生だった
さらにこみ上げてくるものがあった
(続く)