【後編】6年越しに黒歴史と向き合う
「あ、先ほど電話くれたお客さんね。何?どうしたの?」
安定の初手タメ口を繰り出すお兄さん
さすがに6年前なこともあって私のことは忘れている様子
「実は仕事でフィリピンへ行くことになりまして、ボードを持っていけないので、こちらのお店で使ってくれないかと思いまして…」
「他の人に譲ることも考えたんですが、サーフィン始めたのが鵠沼海岸だったので、思い出の場所でボードを使ってくれる人がいたら嬉しいなと…」
などと理由をつけて話をしてお店の人が受け取ってくれることになった
ボードの一部を修理してスクールで出すか、ボードに装飾を施してお店の看板に変身させる、とのこと
お礼を言って店を出た
帰り道、初めてこの店に来たのはいつだったかとカレンダーで調べているとちょうど6年前の今頃だった
柔らかい冬の日差しに心地よさを感じながら、真冬にサーフィンを始めた無謀な自分を思い出す
この道を恋する愚かな女がサーフィンスクールに通うために何度となく歩いていたのかと思うと…
わたし何やってるんだろ状態、ここに極まれり
「引き返せ!お前はスクールで会ったイケイケガールズにそそのかされてショートボードを買うが、その後、好きな男が既に8年ぐらい付き合っている彼女がいることを知ってしまい、でも引くに引けなくなって惰性でサーフィンをすることになるっ!そしてそのボードはただの部屋のオフジェと化すっ!」
目頭が熱くなってきた
もうこれ泣くんじゃないかな
同時に実家に送ったウェットスーツ(夏用と冬用)、知り合いの家に置いてあるヘッドキャップ、ブーツ、グローブはどうしようかと6年後の愚かな女は思った