マグロ回遊記

マグロは泳ぎが止まると死んでしまうんやで

まじめに不良になろうとしている話 その1

せっかく海外で働くのだから日本で”できないこと”をやろうと考えた
ここでの”できないこと”とは現実的にはできるんだけど日本人ならではの空気の読みすぎでしづらいことを指す


そこで分かりやすく見た目を不良にすることにした
具体的には以下の通り


・ピアスを開ける
ふつーに両耳に1つずつ
軟骨は痛いのと落ち着くまでに半年かかるみたいで諦めた


・髪の毛を金髪にする
じつは白髪が目立って来たので金髪にして目立たなくするため
夏木マリみたいなサイド刈り上げの金髪にする


・タトゥーを入れる
もちろん消えるヘナタトゥー
なぜならそのままで銭湯に入れなくなるから


・不良が着てそうな服を買う
セブの全身タトゥーの人たちに人気のアパレルショップ
Tシャツを買うがそれで不良っぽく見えるかは謎


不良というか高校一年の夏休みに調子に乗って見た目を派手にするレベル


ちょうど会社の試用期間が3ヶ月なので、試用期間終了とともに不良化を完成させるスケジュールだ。


ということで、まずはピアスを開けることにした
会社の同僚に聞いたところによると、ピアスはモールに入っているアクセサリーショップで開けてくれるそうだ。
SMモールのシーサイド店がかなり広いみたいで、さすがにそこに行けば開けられるだろう、ということだった。


早速週末を使って行ってみることにした。
私の家からだいたいタクシーで10分ぐらいのところにあり、海沿いに要塞がそびえ立っていた。


で、でかい!!でかすぎる!!
フロアマップを見るも店の名前が分からないので途方に暮れる…
とりあえず最上階(4階)まで登り、フロアをぐるっと歩いて順番に降りていけば見つかるだろう
そう思ってフロアを歩くのだが一向に折り返し部分にたどり着かない
最上階のフロアは美容室、ネイルサロン、マッサージ屋、家電ショップなどが並んでいるため「ここにはない」と判断
3階に降りて歩き出し…「このフロアにもないか」と2階に移動したはずがフロア3の表記が目に入る
「あれ、ここはどこだ」
自分の居場所を完全に見失ってしまった


そして、もう歩けないほど体力が奪われていた
4階にあったマッサージ屋に行って休もうと計画を変更してタイ古式マッサージ1時間コースを受けた
足を洗ってもらっているときにペディキュアが剥がれているのに気づき
マッサージが終わると向かいにあるネイルサロンに行ってペディキュアを塗ってもらった
「あ、そうそう。水とトイレットペーパー買わなくちゃ」とスーパーに入り今日はタクシーを使うからと日用品を買い込んだ
そのあと、ちょっと小腹がすいたなーとカフェで夜ご飯を食べ
満足して帰る気満々になっていた


アクセサリーショップは今日は見つからなかったから、同僚にちゃんと場所を聞いて後日出直そう
そしてタクシー乗り場に向かうとそこには長蛇の列が…


Grabでタクシーを呼ぶかと操作をするが全く捕まらない
仕方なく最後尾に並ぶが1時間かけて2台ほどしかこず、全く人が減らない


幾ら何でもこれはさすがにおかしい…
このまま待ってられないので歩いて大通りに移動することにした
が、ここでさっき買った日用品の重さが腕にどっしりのしかかってきた
この荷物を持っては歩けない…


「Hey,Mam!」見知らぬおじさんに声をかけられた
「タクシー捕まらないならうちの車に乗るか?」
でも、他の客が全くその人の車に乗ろうとしなかったので、これは怪しいと断った
多分倍以上の運賃を請求するぼったくりタクシーだ


1時間が経過した…
相変わらず私の周りをぼったくりタクシーのおっさんがうろついている
やはり日本人だから金持ってるだろうと思われている
しびれを切らした他の外国人がぼったくりタクシーに吸い込まれていく
グループで来ている客は一人が歩いて大道通りに移動してタクシーを呼び、戻ってきて仲間をピックアップするという作戦をとっていた


すでに時刻は22時…

会社のSlackで他の同僚に相談することにした

 

「かくかくしかじかこういう状況です。
この時間に大通りまで歩いて移動するか
ぼったくりタクシーに乗るか
大人しく待つか
どれがいいですかね〜?」


するとセブ生活が長い女性社員から返信があった

「夜道は歩かない方がいいです
ぼったくりタクシーも危ないのでやめた方がいいです!」


私は引き続き大人しく待つことにした


そして、さらに1時間が経過した
しつこくGrabを呼び続けるも反応はなく充電がなくなって来てさらに焦る


するとタクシーが連続してやってくるようになり
目の前の客がどんどんタクシーに乗り込んでいく…!
待つこと約2時間30分、ついに私の番になりタクシーを捕まえることができた!


乗り込んだタクシーのおっちゃんに思わず「あんた神様だよ!!」と叫んだ
「わたし2時間30分もタクシーを待ってたんだけど!」
「そんなに待ってたのか?!だったら俺は神様だ!」
二人で「イエーイ!」とハイタッチした


走り出してからタクシーのおっちゃんが話だした
「今日はダンスコンテストがあって、それで渋滞してたんだよ」
「ダンス?!」
私はおっちゃんが蛇行運転をする車のことを揶揄してダンスコンテストと言ってるのかと思って
「なんじゃそりゃー」と笑った


しばらく走っていると隣のレーンから眩しい光が差し込んできた
リオのカーニバルばりに派手な衣装を来た人たちのパレードだった
欽ちゃんの仮装大賞みたいなセットが所狭しと並んでおり道路を占領していた


「な!このせいなんだよ。このせいで渋滞になってたんだよ」
本当にダンスコンテストだった

わたしは爆笑した
おっちゃんもつられて笑いだした
「フィリピン人サイコーやな!」と私が言うと
「俺たちは友達だー!」とおっちゃんが叫びまたハイタッチした


10分後、無事にタクシーがコンドミニアムに着いた
200ペソのところ私は300ペソ渡した
「100ペソ多いよ!」と返してきたので「受け取ってくれ!なぜなら私たちは友達だから!」と言ってわたしはタクシーを降りた


おっちゃんはわざわざタクシーから降りて「ありがとー!ありがとー!」と叫んでいた
私は柳沢慎吾ばりに中指を立ててコンドミニアムに入っていった


全く目的を果たしていないのに謎の達成感があった